2026-04-20
実家の玄関に、しばらく誰も帰っていない。郵便受けには少しずつチラシがたまり、庭の草は肩の高さまで伸びている。親が残してくれた家は、思い出と同じだけの重さで、相続した子の肩にのしかかる。片付けに通うたび、遠い日の夕餉の匂いがよみがえって、なかなか決心がつかない。けれど、家は住み手を失うと驚くほど早く傷んでいく。雨漏りが柱を蝕み、固定資産税だけが毎年やってくる。いつか、という言葉を置き去りにして、建物だけが年を重ねていく。
相続した実家を売却するとき、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度があります。正式には「被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除」と呼ばれ、所得税と住民税の負担を大幅に軽くしてくれる仕組みです。たとえば2,000万円で売れた空家の売却益があっても、この控除を使えば課税対象がゼロになることもあります。相続人が3人いれば、各自2,000万円までの控除が受けられるため、兄弟姉妹で分けて売却する場合にも有効です。制度の存在を知らずに申告してしまい、数百万円単位で損をする方も少なくありません。
ただし、どんな空家でも控除が使えるわけではありません。対象となるのは昭和56年5月31日以前に建てられた家屋で、相続が発生したときに被相続人がひとりで住んでいたこと。区分所有建物(マンション)は原則として対象外で、相続後に賃貸や事業用、あるいは他の誰かの居住用として使っていないことも条件になります。売却時には、耐震基準に適合させるリフォームを行うか、家屋を取り壊して更地にして引き渡す必要があります。さらに売却代金が1億円以下であること、相続人が被相続人と同居していなかったことなども要件に含まれます。細かな条件が並んでいるように見えますが、一つひとつ丁寧に見ていくと、足利市のように一戸建てが中心で、ご両親が長く住まわれていたケースでは適用できる例が比較的多いのが特徴です。判断に迷う場合は、売却前の段階で不動産会社や税理士に相談しておくと安心です。
この特例でもっとも気をつけたいのが、売却期限です。相続が開始した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しなければ、控除は使えません。令和6年1月に相続が発生したなら、令和9年12月31日までに売買契約を済ませ、引き渡しを終える必要があります。また、制度そのものの期限も定められており、現行では令和9年(2027年)12月31日までの譲渡に適用されます。思い立ってから実際に売却できるまでには、遺品整理・相続登記・境界の確認・買主探し・契約・引渡しと、思いのほか多くの工程が並びます。半年から一年、条件によってはそれ以上かかることも珍しくありません。気づいたときには期限ぎりぎりだった、相続登記が済んでいなくて契約が遅れた、という話は本当によく耳にします。控除を使うつもりがある場合は、相続が発生した時点でざっくりとしたスケジュールを描いておくことをおすすめします。
控除を受けるには、売却後に確定申告が必要です。通常の譲渡所得の申告書類に加え、売買契約書の写し、登記事項証明書、そして市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」を揃えなければなりません。この確認書は、空家が相続開始の直前まで被相続人の居住用であったこと、相続後に賃貸や誰かの居住に供されていなかったことを市町村が証明する書類です。足利市の場合は市役所への申請となりますが、電気・ガス・水道の使用停止証明や、近隣住民からの聞き取り資料が必要になることもあります。書類の準備には意外と時間がかかるので、売却のめどが立った段階で早めに動き出すのが安心です。
制度は心強い味方ですが、そもそも「この家はいくらで売れるのか」がわからないと、決断そのものが進みません。遠方にお住まいで現地を見に来られない方、兄弟姉妹で意見が分かれている方、取り壊すか残すか迷っている方。背景はそれぞれですが、最初の一歩は現在の価値を知ることです。さくら屋は足利市で40年以上、地元の土地と建物を見続けてきました。築年数が古くても、立地や道路付けによっては思いのほか値がつくこともあります。査定は無料で、控除の適用可否についても合わせてお伝えできます。家を手放すのは、思い出を捨てることではありません。家が誰かの新しい暮らしの場になるための、静かな橋渡しです。
#足利市 #不動産 #お役立ち情報
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